第26回障害者による書道・写真全国コンテスト 審査結果発表
書道部門 銅賞
 


鈴木 諄(岩手県)


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全盲です。ぼくは山を見たことがありませんが、ぼくのイメージした山を毛筆で書いてみました。

【寸評】
山から吹く風に頬を撫でる。季節の移ろいを感じ四季を想う時心象風景としての存在の山があります。見えなくてもそこにある山。しっかりとした筆法は見事なものがあります。
 


椋 カツヨ(福島県)


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今年こそ絆の言われた年もなく、何よりも大変な事と思いました。

【寸評】
文意そのものを表現する力強い線での表現です。大震災の後一層実感として心に刻み込まれた思いが伝わります。この力強い表現の如く希望を持って過ごして欲しいです。
 


鈴木 満寿(栃木県)


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私の尊敬する師から戴いた書をお手本にして書きました。この書の通り凛々と生きていけたらと願っています。

【寸評】
年齢を感じさせない伸びやかで艶のある線が紙面に充満しています。大胆な運筆の大字部分と小書き部の清冽な書き振りが相乗効果を発揮して紙面に清らかな響きを奏でています。
 
やりきれない

関口 忠司(埼玉県)


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いつも思ったことを書いています。

【寸評】
歯痒い思いをされているのでしょうか。作品に託された想いが伝わって来ます。しかし線の充実と外連のない運筆は逆の楽しげな想いが表れてほのぼのとした明るさを感じます。
 
笑風

午膓 三春(千葉県)


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右手で書いていた時代を目標に左手で一生懸命書いています。

【寸評】
力強く書かれ筆の弾力に負けていません。半紙二文字ですとかなり窮屈さを覚えると思いますが不自由さを感じさせない作品です。特に風構えは十分理に適った美事な書き振りです。
 
みんな一緒だよ

石本 万紀(新潟県)


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医者に「右手はあきらめてください」と言われたので『やってやろう』と思いました。

【寸評】
張り混ぜに料紙の小画箋を利用した表現で料紙の特性を活かした潤渇の巧みさが目に付きます。父母から頂いた体を大切に想うのと同じに周囲に笑顔をとの想いが十分伝わる文言とよく合致しています。
 
かぜ

大森 千代美(山梨県)


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名前の小さい文字を書くのに苦労した。

【寸評】
大きく大胆に書して作品が拡がりを見せています。線の切れや力強さに圧倒されます。名前は苦労した様子ですが作品に名前が入って一段落との強い意志を感じさせます。
 
きらきらとしあわせ色

松本 むじぇ(岐阜県)


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書道が大好きで書道がある前日には道具を用意しているそうです。ほめられることが大好きで、毎回笑顔でとても楽しそうです。今回はじめて「ひらがな」と「漢字」を入れたことばを書きました。

【寸評】
満天の星の煌めきを想わせる前半部と大きく動いた後半部。心の感動が素直に伝わる表現です。本当に楽しげな筆使いです。どんどん昂揚して行く過程がよく出ています。
 
希望を持って

臼井 志希子(岐阜県)


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志希子、こころざし、希望を持って、生きる子に、との願いで名付けてくれたそうです。67歳の今日まで明るく、強く、前向きに生きてこれたのも親の深い愛情のお蔭様。今年、福島県沖の地震津波に遭われた皆様が、再び希望を持って生きて下さる事を願い、希望の希にしました。

【寸評】
希望を持つ事の大切さを力強くそして豊かな情感を筆に託して表現しています。どこまでも伸びる払いや懸針は構えの大きな余分な力の抜けた確かな力量を見せています。
 
秋の空

池元 蒼(滋賀県)


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指がなかなか開かないため、教師が指を開かせて筆を持たせました。また、腕の稼動域も限られているため、板に半紙を貼ってこの子が書きやすい位置に持っていって書かせました。初めて毛筆の経験をしました。ススキで作った筆の経験もしました。

【寸評】
空には様々な雲の動きや種類がありますが墨量豊かな積乱雲、掠れた絹雲や鰯雲などのイメージでしょうか。墨と筆を活用して面白さを満喫し楽しげな様子が窺える作品です。
 


三田村 弦汰(奈良県)


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3年生になってはじめて毛筆を手にした子どもたちの作品です。横画、縦画、はらいなど、順に練習し、はじめての意味のある漢字に挑戦しました。字の通り大きくのびのび元気よく過ごしています。

【寸評】
初めての毛筆を持って自分の意思で太細、潤渇の変化を出せるという喜びが伝わります。大胆に筆を運ぶ事による線の変化に目を輝かせて書している姿が散見されます。
 
風清新葉影

田口 武二(鳥取県)


【寸評】
清涼の気が流れる初秋の夜を想わせる静謐さが感じられる好作品。余分な力を抜いて余裕ある運筆の冴えは見事です。気脈の通貫性もあって自然な流れを見せています。
 


坪石 孝子(広島県)


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話題の平清盛。日招きを想い、「清」をテーマにしました。筆運びの強弱で、日、流れる水を創造した書です。

【寸評】
墨彩を巧みに利用して動線の変化を巧妙に配置した手腕は見事なものがあります。曲直の変化も楽しんでいます。書する上でのイメージの大切さを十分理解し文字を分解しています。
 
栗ひろい

鉄野 直子(徳島県)


【寸評】
秋空の下、栗拾いに戯れる楽しさを思い出させる生き生きとした線の輝き。郷愁を誘う明るく楽しげな線の表情に作者の心の動きが見えます。緩やかに流れる風の温かさを感じさせます。
 
古今和歌集(よみ人しらず)奥山に

田原 タミ子(佐賀県)


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人里離れた奥山で散り敷かれた紅葉を踏み分けながら、雌鹿が恋しいと鳴いている雄鹿の声を聞くときこそ、いよいよ秋は悲しいものだと感じられる。

【寸評】
扇面私歌一首を直筆の強い線で表現した散布の妙を出しています。すっきりと余分な肉を削ぎ落した強い線や潤渇の変化など章法を十分掌中にしていて安心して見られます。
 
震災復興願

中村 博(熊本県)


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東日本大震災に遭われた皆様には、どのようなお慰めの言葉も見つかりませんが、半年を過ぎた今日でも、テレビや新聞等で被災地の現状を拝見するとき、一日も早い復興と原子力発電所の安全を祈らずにはおれません。日本国民は勿論、全世界の人々が応援してくださっておりますので、必ずや心から喜べる日が来ることを信じて頑張ってください。応援してくださった、すべての人様を始め、義捐金、そして物へと協調いただき、心から感謝とお礼申し上げます。

【寸評】
余分な力の抜けた自然な運筆が温かで豊かな心の動きを醸し出しています。虞世南の孔子廟堂碑のような温和な書線が素材表現によく合致して復興を希求する想いが良く出ています。
 
大志

柴田 理紗(大分県)


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中学生になってはじめての行書に挑戦です。

【寸評】
伸びやかな筆致は空間での呼吸が上手に活かされた賜物です。外連の無い運腕の大きさが筆の特性を十分引き出して直筆特有の柔和ながらも強い意志を感じられる作となりました。
 
上をめざして

甲斐 冨士子(宮崎県)


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障害はあっても、人様にできることが、私にできないことはないはず。この気持ちが私の信念です。そんなつもりで書きました。

【寸評】
しっかりとした土台があればこそ強い線が出ますが見事な土台を築いています。自信を持って書いており運筆に迷いがありません。結構の緊密さは楷書を長年書き続けてその原理を自分の物としたのでしょう。立派な作となりました。
 
北郷荘の合い言葉

和田 大寛(宮崎県)


【寸評】
励まされる言葉です。力強く大声で呼び合う地域の絆を感じさせる元気一杯の作品です。書は自分の想いを書く事が大切であることを雄弁に語っている素晴らしい作品です。
 


大林 桂地(宮崎県)


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十二支の中から選んでいただきました。昨年から象形文字に挑戦しています。

【寸評】
原始性豊かな象形文字はその成り立ちを想像可能な点で他の漢字とは一線を画していますが、この作品は十分それを証明しています。どこまでも伸びる長い線と終筆のスピードが見事です。
 
随意

山内 文代(宮崎県)


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利き腕の右手を失い、左腕で書き上げたが、文鎮を3個使用しても用紙が動いて書くのに苦労した。

【寸評】
雲が、水流が自由に動くように自然な筆の運びを見せて留まる所を知らない筆致は草書の極意を掴んでいる事を見事に出しています。文字の正確な把握による緊張感が奥行きのある作品となりました。
 
平和

東 千代子(宮崎県)


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障害者ふれあいサロン活動で毛筆も行っており、今回サロンメンバー全員で応募しました。

【寸評】
すっきりと澄んだ線で纏めあげています。執筆に際し余分な力が抜けて余裕ある運筆を生み出しています。線の充実さに秀でています。特に懸針のしなやかさは見事です。
 


呉屋 美枝子(沖縄県)


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100枚ほどの半紙を使いました。とにかく全てにかけて筆遊びは難しいものです。

【寸評】
非常に呼吸の長い線です。軟毛の筆を十二分に活用した減り張りのある高度な作品です。紙面構成も潤筆を大変上手に活用して渇筆部分が美しくなりました。緻密な計算の上に書かれています。
 
退之を祭る

宮城 洋子(沖縄県)


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左手が不自由のため、紙を押さえることができず、体勢が歪んでしまうので一つ一つの線をまっすぐに書くことが難しかったです。この作品を仕上げるまでに50枚以上の半紙を使いました。

【寸評】
楽毅論や北魏の墓誌銘を想わせる強い意志的な書風で纏め上げられ緊張感に溢れています。一本一本の線がしっかりと揺るぎない筆致で書かれながらも余分な力の入った所が見えません。
 


斎藤 大輝(仙台市)


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祭りから笑顔と元気を!「東北六魂祭2011」にて

【寸評】
楽しい書です。櫓があり踊る人がいるような秋祭りを想わせる作品です。祭りとはこのように心躍らせる力があるようです。ゆったりとした運筆が一層心を掻き立てられます。
 
雷鳴

長塚 恵美子(さいたま市)


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一番上手に書けたものを出展しました。

【寸評】
リズムに乗って一気呵成に書かれスピード感溢れる作品です。穂先の弾力を上手に利用していて線の透明感と明るさが目に入ります。抑揚の自然な動きが見事な筆圧の変化になりました。
 
般若心経の中から 蜜多心経

内山 行央(相模原市)


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左利きだったのが脳卒中後遺症で左が麻痺で不自由になり、右手で書いています。東北大震災のあと般若心経に取り組みました。下敷きは白いフェルト上の赤枠取り(4文字・6文字)に半紙を合わせ、文字が中心に書けるように注意している。また半紙の上下を押さえる文鎮は必修。毎日筆を持つことの楽しさが表面に出ていると思います。

【寸評】
震災の被害者の冥福を想う気持ちが王義之の集字聖教序に取り組ませたのでしょう。温かで伸びやかな書線が語る世界は慈悲に満ちています。深遠な想いを感じさせます。
 


村松 幸旭(静岡市)


【寸評】
静かにゆるやかな筆の運びは温かで豊かな海を想わせ心が癒されるようです。初夏の涼やかな海風が作品中に流れています。太く温かな線が全体を引き締め効果的になりました。
 
顔氏家廟碑の臨書

鎌田 義則(広島市)


【寸評】
顔真卿の書の特徴である蚕頭燕尾をよく掴んで書いています。直筆で書かれた重厚な線は顔真卿の剛直さに通じています。真摯に取り組んだ成果が高度な作品となりました。
 
仮名 和歌・作者 柴舟

小田 隆(福岡市)


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不随意筋運動で連線が実線になる、その逆、しんにゅう偏が紙からはみ出す(それを大きく)、三旁がどうしても四旁になるなど苦労の時期がありましたが、現在何とか克服、書を楽しんでいる毎日です。

【寸評】
しなやかな線が織りなす軽快なリズムは見事な作品となって表れました。丁寧に正確に書かれた文字群が自然な潤渇と相俟ってゆるやかな流れを形成しています。散布も巧妙なものがあります。