第26回障害者による書道・写真全国コンテスト 審査結果発表
書道部門 銀賞
 
不退転

吉田 佳子(北海道)


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書いているとき、筆を持つ手がしびれるように痛んできます。進行性の難病なのでいつまで筆がもてるのかなぁと思いながら書きました。病気に負けないで力強く書こうと思って筆を運びました。

【寸評】
文意に託された気持が強い線に表れています。曲直のリズムを掌中にした動きが作品に緊張感を与え奥行きのある作品となりました。潤渇の変化を見せています。
 
百人一首(変体仮名)

菊地 征子(岩手県)


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変体かなは好きですが、作品としてはもっとかすれを出せるような上手に書けるようになりたいです。一本調子の字で失敗ですが応募します。

【寸評】
仮名作品の妙趣は平安期の雅味であると言えますが線の流麗さや紙面構成などよく考慮された仮名作品です。古筆の習練後独自のリズムで作品制作をしており蓄積された力を感じます。
 


石川 夏緒(岩手県)


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自分の書きたかった言葉「絆」を選びました。まったく文字を見ることができないので、特に画数の多い字は難しかったのですが、がんばって書きました。

【寸評】
今年こそこの文字の力を必要とされた年は無いでしょう。心に映った文字を表現する時作品の巧拙を抜きに感動を呼びます。布字や結構などは二次的なもので心に響く文字表現が見事です。
 
書譜 唐・孫過庭

菅原 道博(新潟県)


【寸評】
筆の抑揚を上手に活かした運筆の冴えが見事です。意先筆後の極意を掌中にして書されており澱みの無い流れの美しい作品となりました。真摯な臨書姿勢が見えて好感が持てます。
 
素敵な道

北村 圭一(岐阜県)


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歌手の奥華子の大ファンです。CDを持ってきて、その中から好きな歌詞を選び出し書いています。今回は字が白でバックが黒になるように書きたいということで、「わんぱう」を使いました。裏から墨を塗り白い文字が浮き出てきて満足そうでした。

【寸評】
書を楽しみとする姿が窺えて大変豊かな気持ちになります。書を楽しめる事は実生活が豊かな情感を持って過ごせる事だと思われます。微妙な筆の感触を十分楽しんでほしいと思います。
 


松本 真依(岐阜県)


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「これから習字の勉強を始めます」という大きな声の挨拶から始まります。お話をすることが大好きです。難しい漢字に毎回チャレンジをして書いています。「暑」は夏から連想することばで書きました。

【寸評】
真夏の暑さがムンムンと漂うような文字です。筆を紙に押し着けて力強く書きあげながら豊かで柔らかな線を取り込んでおりホッとする気持ちも見える感も出しています。
 
樹涼暑気潜消

若園 重雄(岐阜県)


【寸評】
大変な巧者です。布字、筆意、運筆などどれを取っても否のある所が見つからない作品です。この境地に至る道程の長さを感じさせますが現在は余裕を持って楽しんでいる様子が窺えます。
 
和(家和萬事成)

山田 輝元(三重県)


【寸評】
墨量豊かに書した文字に字義を与えています。毛筆は墨量の変化により心を表現できる点特異ですがよく特性を活かしています。小書き部分の見事な書き振りに目を奪われます。
 


木下 祥吾(滋賀県)


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筆づかいを工夫してとても太い木が書けました。

【寸評】
どんな風にもビクともしない木、大地に深く根ざした巨木。そんな印象を与える作品です。枝葉を見るのでは無く、それを成している根幹を見つめる透徹した心が感じられます。
 
秋の夜 名月

古家 愛子(滋賀県)


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先生の指導のもと、一生懸命に書きました。

【寸評】
構えの大きな運筆が線に切れと伸びを与えています。筆圧の変化の自然さが抑揚の妙を出して作品を一段と高めています。文字の正確な結構を得て楷書の真髄を得ています。
 
万葉集より

福田 芳美(奈良県)


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大伴家持の秋の歌を選びました。彼女が植えた庭のなでしこの開花を待たずに亡くなった愛しい人を想う歌です。なでしこは悲しい花としてとらえられています。

【寸評】
古筆をよく掌中にした書風で香紙切などを思わせる強い線が魅力的です。穂先の強いイタチ系の筆を用いてリズミカルに運筆して流麗さを表現しており仮名作品らしい作品です。
 
和楽

川畑 陽子(鹿児島県)


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過程も会社も世界全土でもこの和楽であってほしいと思い、真心を込めて書きました。

【寸評】
ゆったりとした呼吸で書かれた作品で紙面に長閑な風が流れています。世相騒がしい折この気持ちが大切に思われてます。一本一本の線に願いを込められた様子が表れています。
 
被災者の皆様に

矢嶋 夫(静岡市)


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被災地の皆様に「頑張って」と軽々しくとても言えませんが、トヨさんのお気持ちをお借りして敬写させていただきました。被災者の皆様にご冥福をお祈りします。

【寸評】
震災の被災者を想う芝田トヨさんの詩文。この詩文に共感を覚えて丁寧に、そして筆致豊かに書きあげています。何か敬虔な祈りを感じずにはいられない力を覚えます。
 
春酒介寿

鈴木 幸雄(浜松市)


【寸評】
酒は百薬の長と言われますが作者の実感でしょうか。急がずゆったりとした空間を味わいながらの書き振りが文意と作者の気持ちの一体感を高めています。線の温かさに温顔を見る思いです。
 
道の辺に…(西行法師)

上田 智恵美(広島市)


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墨の濃淡と全体のバランスに気をつけました。制作時期に合わせて夏の歌を選びました。

【寸評】
高野切一種のようなゆるやかに流れる書風で気持ちの落ち着きを感じます、料紙は独特の触感があり穂先を立てなければ紙に負けてしまいますが直筆の強い線を駆使して上手に纏めています。